ICCトヤマの活動

平成16年7月 報告
『茶室設計の基礎と実際』

日 時 平成16年7月21日(水) 11:00 ~ 15:00
場 所 国登録有形文化財 富山県民会館分館 内山邸
参加人数 46 名

ようやくこれから夏休みというのに、猛暑にすでにうんざり気味の7月21日、やや蒸し暑い曇天のもと、7月例会が行われた。茶室設計の基礎と実際、というタイトルで、数寄屋大工の木下清博氏をお招きしてのセミナーと、歴史あるお茶室の見学、そして実際にお茶を頂こうという趣向である。

 

会場の県民会館別館「内山邸」は、室町末期から続く1万石の豪農で、その最盛期、明治後半から昭和初期にかけて、藪内流の粋人でもあった当主によって普請された母屋・茶室・納屋などが広大な敷地に配置されている。

正午の茶会を想定して11時の集合時間ではあるが、本日の参加者は46人と大盛況なので、おいでいただいた順にお茶室にご案内となる。しばらく広間などを見学していただいたあと、母屋の奥に進むと、濡れ縁が庭に突きだした、風流な「月見台」。その奥が、今日の茶席となる「書院茶室」である。

躙り口をくぐると、持仏堂のある寄付待合いとなるという変則的な茶室なので、まずはここでお菓子を頂く。白足袋に浴衣姿の八木さんが、女性陣に「畳の縁を踏まないで!」と注意されながら出してくれるのは、京都でも一番という料亭「和久傳」の、これまた評価の高い創作菓子「西湖」である。かなり大ぶりなのだが、冷え具合が心地よく、つるつるとのどに入ってしまう。

 

更に奥へ入った床の間つきの茶室は、四畳半本勝手。軸はこの季節ならではという金魚、七つの節目が並ぶ赤松一枚板の床板には、ほおずきの香入れ。お茶も京都からの取り寄せで、至福の一服を頂いた。

お茶会という今回の趣旨をよくよく伝えたせいか、お弁当も、ます寿司など郷土料理を意識したボリュームいっぱいのもの。食べきれない人が続出するも時節柄「お持ち帰り」もかなわず、泣く泣く処分。

あくせくした日常を離れて、セミナー前になんだかすっかり満足していた参加者の前に、予定時間をやや遅れたと汗だくの木下講師が到着。「ただの大工ですから、話すのは苦手で」といいながら、お茶とお茶室の概要を説明していただく。参加者からは、炉の施工方法、和室のポイント、「好み」についての考え方など鋭い質問が続き、これにも現場の経験に基づいた具体的な説明があった。なにより誠実な人柄の伝わるセミナーで、セミナー慣れした皆さんにも満足していただけたのではなかろうか。ちなみに講師は、「和久傳」ともつきあいのある、中村外二工務店で修行をした方である。

 

閉館時間が近づく中、木下講師とともに、あらためて庭の二つの茶室を見学したり、何かと後を引く例会だった。いつも会員・役員の皆さんの多大なご協力で実施させていただくという例会だが、今回は特に、当日のお手前をはじめ、お菓子やお道具など、米田理事にたいへんお世話になった。御礼申し上げたい。

(宝田記)